銀の魔術師と捕縛の糸

8.暗闇に落とされて 02
しばらくぼんやりとしていて、ふと、自分が寝そべった状態にあることに気付いた。
――起きるか。
重い手足に力を込める。
下はじゃりじゃりと音が鳴る。
ごつごつとしたものも混じっている。
「んっ……」
関節が凝り固まっている。
背骨が鳴る。
やっとの思いで起き上った。
血が行き届かずに、軽いめまいに顔をしかめる。
砂利が敷き詰められた平原だった。
ぼんやりと霞がかっていて、見はらすことはできない。
突然の強い風に、髪が嬲られる。
その風の中に、知ったにおいがあったような気がした。

知ったにおい。
知った音。
知った声――声?

強く眉をひそめた。
不快感が募った。
今のは、確かに知った声だった。知った声だったがしかし、

――罵倒された?

風上に顔を向ける。
暁光を孕み、薄明るい。

ぎしぎし鳴る膝を押さえて立ち上がる。
道なき道を一歩、踏み出す。
後は勢いだった。
気持ちに勢いがついた。
少し傾斜がついている。
足が重い。持ち上げるのが億劫だ。
それなのに、諦めてはいけないような気がして。
行かなくてはいけないような気がして。
音を立てて、砂利を踏みしだいた。