銀の魔術師と捕縛の糸
fragment2何となく、背中に違和感を感じた。
予感、といってもいいかもしれない。
――夏葵?
香葵は黒板を見るともなしに見ていた。
授業終了まで数分。
何となく、落ち着かない。
ざわざわとしたものが胸の内に満ちる。
気になる。
香葵は教壇に立つ英語教師をじと目で見た。
この老年の英語教師は、授業が長引くことで有名だ。
――夏葵は?
夏葵は今時間、体育のはずだ。
あかりと利がついているから大丈夫だと思いたい。
それなのに、ぞっと寒気がした。
背筋に冷たいものが走る。
圧倒的な呪力と、恐怖。
音ならぬ音と、衝撃。
「夏葵……?」
周りに聞こえないくらいの呟きがこぼれた。
声が、聞こえたような気がした。
居ても立ってもいられない。
夏葵、夏葵、お前、何が――?