銀の魔術師と捕縛の糸
5.纏わりつくもの 03鬱陶しい、と思った。
夏葵の傍にいると嫌でも感じる、呪力。
微弱ながら、夏葵に包囲網をしぼっているかのように。
――誰かが夏葵を狙っている?でも誰が。
夏葵の顔色は、時間を経るごとに白く、青くなっている。
息が荒い。
そして、夏葵の内部から響いてくる――波動。
夏葵が呻く。
と、夏葵に返しそびれた携帯が、あかりの手の中で震えた。
「夏葵、返信来たよ」
隣に屈みこんでそう言うと、夏葵はつらそうに閉じていた目をうっすらと開けた。
「読む?」
微かに頷いた。
「ええっと……」
メールの内容には10分で着く、とある。
「10分……?来てるのかな……」
ぼんやりとした表情で夏葵が呟く。
その唇は色を失って久しい。
苦しそうに息を継ぐ。
――また、
何かが夏葵の周りに渦を巻く。
夏葵の周りで径を狭める。
他に気づいている人はいないのだろう。
――利は。
利が結界を張れば防げるだろうか、あかりはそう思って腰を上げた。