銀の魔術師と捕縛の糸
5.纏わりつくもの 01身体に違和感を感じた。
――何だ?
――視線?
それもあるが、何か違う。
首筋に何かちりちりと感じる。
「う…………」
夏葵は髪の中に手を差し入れた。
足音、
ドリブル、
考えごとにならない。
音と振動が一体となって、頭痛のような反響がある。
手足を伸ばすことさえ、指令が全身に行きとどかない。
何かに邪魔されたような――そう、結界外部から近づこうとするような重さ。
壁に頭を預ける。頭を仰向けて、ひっきりなしに呼吸を繰り返す。
「凪、お前具合悪いならそう無理しなくてもいいんだぞ」
話しかけてきた体育教師の後ろから、利が夏葵を覗きこんでいる。
体育教師が伸ばしてきた手を嫌がるのも億劫だった。
「熱は……ないようだな。低いか?早退したらどうだ」
もはや返事すら面倒で黙っていると、体育教師は「とりあえず、授業中は休んでろ」と言い残した。
「授業中休んでて回復する?」
あかりが首をかしげた。
利も似た反応をしている。
「最近白くなる一方だしな……とりあえず、授業後に保健室に突っ込んでおけば帰りに香葵にでも」
あかりと利が勝手に体育教師と相談を始める。
「親、呼ぶ。連絡つくはず」
ポケットから携帯を引っ張り出すのも、この不調では一仕事だ。
メールの作成画面を開いた。