銀の魔術師と孤独の影

episode-早春- うたたね
連れ帰っても未だ目を覚まさないあかりは、いつも泊る座敷に寝かせた。
夏葵は頑として傍から離れようとしなかった。
慧はガラスを片づけている父の手伝いに行ってしまった。
利は――どこにいたらいいのか落ち着かす、居間に戻ってきた。



薄々気づいていた。いつからか雰囲気が違う事に。
仲が良くなった――ただその一言で済ませられたら、どんなに気が楽なことか。
微妙な立ち位置にあったせいで、利はどうにも踏み込めずにいた自分をやっと自覚した。
いっそ香葵くらい鈍ければよかったのに、と思わないでもない。
夏葵が何を考えてるか、中途半端に気付く自分に嫌気がさす。
――ああもう、嫌だなぁ。
人のことで自己嫌悪に陥る自分も、半端に聡い自分も、いとこであり幼馴染であり兄弟のようなあかりを取られたような喪失感も――居場所を取られた嫉妬も。
さっぱり気付かなければよかったのに。
とろとろと瞼が落ちてくる。
あかりと夏葵がつきあってるなんて――
それきり、利の意識はまどろみに沈んだ。