銀の魔術師と孤独の影
episode-早春- 荒御魂刀台を起こそうとした瞬間、地面が撥ねた。
轟…………………………………………………………
「う、わ……!」
「っ何だ!?」
畳で滑ったのか、夏葵が身をよじって周りを見る。
轟、轟…………………………………………………………
轟轟、轟…………………………………………………………
畳に転がった神刀が、揺れと関係なくがたがたと暴れる。
その状況で、利はこれが異常事態なのだと気がついた。
「め、鳴動……」
――それも、大きい。
利がそう思った時、授与所のガラスが派手に割れる音が響いた。
続いて、もう一度。
轟……………………………轟…………………………………………………………
…………………………………………………………
鳴動が遠ざかる。
「慧さん――」
夏葵が跳ね起きて、授与所のなかに駆け戻った。
割れた戸口を回って、割れたガラス戸の向こうに回っていく。
「兄貴!」
「……大丈夫、だ」
慧は顔のあちこちに擦過傷があるが、大きな傷は見当たらなかった。
どうやら背中からガラスに突っ込んだらしい。
「あかりだ――」
慧は夏葵の手を借りて起き上った。途中、微かに顔をしかめたのは打ち身でもしたのか。
「何か、憑いて――いや、荒御魂が」
荒御魂が、あかりに――裏山へ――慧はそう途切れ途切れに言った。さっきの今だ。動転しているのか。
鳴動は治まったわけではない。未だ裏山に場を移して鳴り響いている。
「行かないと――」