銀の魔術師と孤独の影
18.しゃれこうべ 03目の前で火花が散った。
激突の衝撃で腕にしびれが走る。
錆びた刀、欠けた刀、槍、弓、あらゆる武器を手に手に、古の影が武器を振り上げる。
オオオオオオ………………!!
たくさんの血まみれの手が伸びてくる。
まずい、とあかりはそう思った。
このまま対応していたら力負けするのは目に見えていた。
押しこまれている刀を受け流して、闇戸を一閃する。
いやな感触が腕を伝った。幻なのに、そのあたりは嫌にリアルである。
狭土すらも引き抜き、目の前にある刀を腕ごと切り落とした。
幻であることがせめてもの救いであり、悪夢だ。
得物を見せているせいか、あかりの周りには異常に影が群れてくる。
他の3人はどうしているのかがわからない。
迂闊に気を逸らせられない。
目の前の敵から戦闘能力を奪う事にしか身体を使えない。
集中し過ぎてはいけない、拡散し過ぎてはいけない。
幼いころから言われ続けたきたことをこの瞬間も感じていた。
利はあかりのように怖いものなしではないのだ。
怖いものは怖い。
父も兄も、決して恐怖を無視するなと自分に教え続けてきた。
恐怖はあらゆる感覚を敏感にするからだ。
突撃してきた影からとっさに逃れられたのも、恐怖故だ。
あかりと比べたら、利の戦闘センスや感覚は天と地ほどの隔壁がある。それを埋めるために、恐怖を使い倒せと二人は利に教え続けてきていた。
――怖い
張り巡らせた結界をたたき続ける手、手、手。
あまりの数に結界が震えている。
影の虚ろな目に映る自分が青ざめている。
「此れの二門はいや急し日向の立花の小戸の阿波岐原に往坐て」
ばんばんばんばんばんばんばん!
「上津瀬はいと疾く下津瀬はいと弱しとて中津瀬に濯払賜う時に生坐る」
ばんばんばんばんばんばんばんばんばんばん!
血の穢れに結界が悲鳴を上げる。いくら払っても払っても追いつかない。
鈍い赤と黒が視界を埋め尽くす。
状況が分からない。
あかりは、夏葵は――