銀の魔術師と孤独の影

17.嘆きの影 05
あかりは詳しいことは知らないので、魔方陣を踏まないように追いかける。
夏葵は減速することなく、香葵を飛び越えてから振り返った。
「香葵、寝てる場合じゃないぞ!」
「や、それは」
夏葵は苛立ったように声を荒げて話す。
夏葵が苛立てば、逆にあかりは冷めていくのを覚えた。
「こいつ担ぎ出すぞ!足から支えられるか」
夏葵はナイフを仕舞うと、香葵の両脇に手を差し入れて起こさせた。
「いいわ――ダメ、無理、重い」
あかりはあっさりギブアップ宣言を下した。この図体だ、60キロはあるだろう。
「その刀2本も振り回してか」
「これ軽いの。10キロもないし」
あかりはそう言うと、ふと振り返った。荒い足音。
「あかり!夏葵!」
「利!」
こいつ担ぎ出せ、と何かの女王のようにあかりは香葵を指差した。
「あ、ああ」
軽く眉をひそめてから、意識のない香葵を肩に担ぐ。
「魔法陣の外に。護身用の結界も」
利に預け切った夏葵は素早く身をひるがえした。
「あかりは護衛頼む」
「――ええ」

オオォオオオォオ――――――!!
オオゥォオオオ………………!!



――――影が、渦巻く