銀の魔術師と孤独の影
17.嘆きの影 01オオォォゥァ………………………!!
オオォォゥァァ………………………!!
「くっ……邪魔だ!」
夏葵はバックハンドで抜いた大ぶりのナイフをかざした。
「――ここに力を宿ししは夜空に輝きし赤き戦神!すべからく妨害を働く者を排除し此方に道を――ええい邪魔だ!!」
怒号一撃、気迫に近い呪力で強引に湧いて出てきた影を押しのける。
オオオオオ………………!!
すさまじい数である。あかりももう獲物を抜いている。
これを烏合の衆ととるか、軍勢ととるか。
「あかり、お前禊は!?」
「さっぱりできない。利の専門」
並列して突破しながらあかりは涼しい顔をして答える。今のところ結界が張れなくて困ったことはない。
「物質化もまだ中途半端なんだから強硬突破――っと!!」
横合いからの邪魔にとっさに反転してかわす。
オオオオ……………………!
進むほど増えていく影。
どこから――グラウンド?
「ねえもしかして香葵――」
「だからこいつらが邪魔なんだろう!」
馬鹿、と余計な一言が投げつけられる。
「馬鹿、ね……じゃあ急ごうか」
あの一言、あとで絶対に責任を取らせると心に誓い、あかりは闇戸を大きく引いた。