銀の魔術師と孤独の影

16.異界 04
澱んだ空気が意識まで引きずり落とそうとしているような錯覚を覚えた。
角をまがった先の闇の先には何もないのではないか、という思い。

利は静かに息を飲んだ。
自分の考えに寒気が走った。
壊れた窓から校舎に侵入したのは、あかりに押し切られたからだ。
曰く、「校舎内でこれ振り回して何かあったら?」とのこと。
行けとは言われてないが、そう言われては押し切られたのと大差ない。
自分の不甲斐なさに呆れる気持ちが、禍気でさらに重く沈む。

うっすらとした恐怖。
悪しきものを想像させる温い風。
どこか哀しい哭き声と反響。

――嫌だな。
ふと、そう思った。何が嫌なのかは分からず、ただ嫌だった。
慧に聞いた怪談と、どこにでもありふれた怪談が意識の隅にちらつく。
「…………」
自然と無言になる。
建物の中というのは、不思議と静寂ではないから、よほど意識させられる。
――何も音がしなければいいのに。
――外だったら気にならないのに。
ため息とともに階段を上る。
登り切った先には、また、闇。

闇、闇、闇、

――蛍光灯を。

闇を、

闇、が――――――