銀の魔術師と孤独の影

14.聖の森 05
狭霧神社の土地は、時折「鳴動」と呼ばれる現象を起こす。
現象は一定ではなく、地面が撥ねる、突如として気温が下がる、植物が枯れる、といった怪現象として現れる。
鳴動が起こる原因は様々だが、平均して呪力の変化に対して土地が反応していることが多い。
今回は、明らかな禍気か、それとも何か――夏葵の見ている夢か。

「凪、気が付いてる――だろうな」
「あいつが気付かないわけあると思うの?――ってか夏葵も香葵も凪でしょうが。どっちかにしてよ、私が分からない」
原因不明の現象の苛立ちを利に向けながら、あかりが低く毒づく。
「出所、わかるか」
「分かってたらこんなところうろうろしてないわよっ」
「怒鳴るなっ、警官が来る」
あかりの手には狭霧神社が祀っている刀の一振りがある。見つかろうものならその場で銃刀法違反確定だ。
「ってかなんで木刀にしないんだよ、いつもいつも」
「手が滑るからよ」
どちらの声も会話も刺を含みながら片っ端から道路を突っ切る。もはやしらみつぶしだ。



轟…………
轟轟……………………



また、鳴動が起こったのか、微かに空気が震える。
神社と共鳴して、刀――闇戸(くらど)が震える。
「暴れてる――」
あかりが立ち止まる。
小刻みに刀が手の中で暴れている。
「大丈夫か」
「まだ平気。そんなにひどくない」
抜けば大人しくなるし、とあかりは物騒極まりないことを言う。



轟轟………………
轟………



「よし、行こう」
利は返事をせずに走りだした。
「次の角曲がろう」
「ええ」
カーブミラーを一瞬確認しただけで一気に曲がりきった先には



「ストップ!!」