銀の魔術師と孤独の影

14.聖の森 03
「そういえば、あの桜、ついに折れたよね」
「どの桜」
「ほら、一番大きかった、古木のやつ」
利がそういうと、慧は眼を伏せた。
「そうか、ついに折れちゃんたんだ……。綺麗だったのに」

そういえば、桜の怪談はその桜にまつわる話らしいよ、と慧は何気なく呟いたとたん、あかりが眉をひそめた。
「それ、古いの?」
「ああ、古いと思うぞ」
「え、じゃあさ――」

その怪談が本当だったとしたら、夏葵の夢は――






轟………………………
轟…………轟轟……………………



「――――――っ!!」
床が撥ねる。

――――――――轟、轟

「な、んだ――!?」
強烈な揺れと地鳴りが突如として終わる。
慧が目を細めてテレビをつけた。チャンネルを一巡りさせるが地震速報は入らない。
「……じゃあこれは」
「鳴動だね」
利のかすれた声に慧が険しい声で答えた。
「6年以来だ。この町で何か起きてるね。――それも、大きな」