銀の魔術師と孤独の影
14.聖の森 02「……そう言えば」
「何~?」
「お前たち、明桂の怪談話は知ってる?」
「怪談だあ?」
課題の手を止めた利が胡乱げな顔をした。
「俺の時には流行ってたんだよ。――どれくらいあったかなあ、十三……四くらいかな」
それで?とあかりは回想に入っている慧の脇腹をつついた。
「――ああ。全部は分からないけど、聞くかい?」
「そうね、参考までに」
「それじゃあ――
ひとつ、
校内で獣の気配を感じたら振り返ってはならない、
それらは学校を作るために平原を追われたため、
認知するものがいればかみついてくる、
ひとつ、
黄昏時に悲鳴を聞いてはならない、
黄昏には彼岸と此岸の境界があいまいになり、
あちらからの禍つ声が流れてくる、
ひとつ、
調理室に欠けた包丁を置いてはならない、
血に飢えた亡者がふさわしい得物を探して、
校内に入ってくる、
ひとつ、
校内でこっくりさんを行ってはならない、
この土地に未練を残しているものたちが、
無念を晴らすためにとりつこうとやってくる、
ひとつ、
校庭の桜を折ってはいけない、
桜は怨念を糧に花を咲かせる、
そのため、折れた所から花にならなかった怨念が流れ出してくる
その怨念は、折った人のところに流れる、
ひとつ、
……………………
……………………………………
――っていうのが」
慧が話を切ると、あかりと利は顔を見合わせた。