銀の魔術師と孤独の影

13.目覚め 02
「……雪が、降ってきた」
「雪、ねえ。確かに今月末には降るだろうけど」
「ああ、あと」
夏葵は鞄からメモ用紙を出した。
「これ、字わかるか」
あかりが無言でメモ用紙を取る。

――アア、ミタマがナイテイル

夢の中で繰り返し響いてくる言葉である。
「アア」は感嘆詞だし、「ナイテイル」に当てはまる字は2・3の意味がわかるから別にいい。
「ミタマ」がわからない。馴染みがないせいか。
「『御魂』でしょ。これは」
あかりは一瞥すると、メモ用紙を机に置き、指先で漢字を書いた。
「『御魂』?……ああ、それがあったか」
「で、これ何?」
つま先でメモ用紙をはじきながらあかりが見上げる。
「夢の中で響いてくるんだ。繰り返し」
「へえ、面白い。『御魂』って、何の魂なんだろ」
持ち前の好奇心が刺激されたらしく、あかりの目から眠気が消える。
「それは――」
さっぱり、そう言おうとしたところでチャイムが鳴った。
利の悲鳴が上がる。わかりそうだったのに、とか何とか。

「平和なことだ……」