銀の魔術師と孤独の影
7.対抗 03カッターでなかなか切れないとことからすると紙ではないらしい。
利がもどかしげに扉の向こうに目をやっている。
あかりはそれを視界の端に収めながら木刀の握り具合を確かめていた。そう重くないところからすると、利は一番軽いものを選んできたようだ。
「何か……」
くる、と利が低く呟く。
前後して、重圧は減らないのに体が軽くなった。
この感覚には覚えがある。呪力収拾のそれだ。
「組合がねじ込んだのか!」
珍しく利が吐き捨てた。当たり前だ。現代魔術師組合は正員を18歳以上と定めているのに、凪夏葵は数えで16歳だ。
あかりは呪力が扉から溢れてくるのを幻視した。なんて量だ。
言葉もなくそれを見ていると、ふいに逆流し始める。呪力収拾の最終段階に入っている。
「利、早く!」
「切った!!」
利はカッターをポケットにねじ込み、第三体育館の扉を開け放った。