銀の魔術師と孤独の影

5.暗躍 02
家に帰ると、夏葵は部屋に鍵をかけた。
そのままばったりベッドに倒れこんだ。今日はさすがに消耗した。
携帯アラームを2時間後に設定すると、夏葵は着の身のままで眠りに落ちた。



――?
最初は何で目が覚めたのかわからなかったが、スヌーズが入った瞬間、耳元の携帯アラームを叩き切る。
外も部屋ももう暗い。
――あー飯作んなきゃ。
寝乱れた髪を撫で付け、夏葵は部屋を出た。
面倒なので丼物で済ませて再び部屋に引きこもる。部屋と言っても夏葵は二部屋占領しているのでさっきとは違う部屋だ。
しばらく開けていなかった引き出しを引っ掻き回す。
探し物は情報収集用小型無線通信機器とか言う、実態は超小型盗聴器だ。第三体育館と教室に仕掛けるつもりである。
だがいくら探しても1つしか出てこない。使い切りなのでストックがあったと思ったがそれもない。
記憶をたどると、実家の夏葵占拠の実験室兼工作室に父と香葵が入らないように仕掛けて来たことを思い出した。どうりでないはずだ。
仕方ないので体育館に絞って準備を始める。
いじりまわし手の平で転がしながら隠し場所を考える。
音が拾えてかつ、壊れないところ。
少なくともボールが転がる所にはつけられない。
――仕掛けるならステージか
足音が拾えればいいので取り付け位置は低く。
とするとステージ下の椅子の収納場所が一番適当だ。夏葵なら下の隙間から指が入る。あそこなら掃除する物好きもいない。
明日の体育のときにでもほうり込むか。
夏葵は盗聴器の出来栄えに納得し、それをポケットに入れた。