銀の魔術師と孤独の影
5.暗躍 01その日家に帰ってから、あかりは利に電話した。
『……何?』
さっきまでいたのに何か用か、といいたげな利の声が答える。
「明日半日でしょ。何か用事入ってる?」
『手伝い』
「ならオッケー。ちょいと話があるから押しかける」
勝手な……と呟く声がしたが、あかりは聞こえなかったふりをして通話を切った。
階下から弟が呼ぶ声がしたからだ。
「姉貴ー!飯冷めるから早く!」
食べてろ、と怒鳴り返して、メモ用に素早くメールを打つ。
2分ほどで打ち終えると、携帯に厳重なセキュリティをかけて部屋を出た。
魔術師は例え誰でも――自分の師でも――秘密を守り抜く。
あかりはそのための秘密の一時的な蓄積に携帯を使っていた。
このご時世、頭の中に入れない限り盗まれる可能性があるが、一時的である分には十分有効だ。
加えてあかりは、念のため今は使っていない携帯を秘密の保管所と決めている。
これをトリプルロックをかけて、大概持ち歩く。防水なので破損にさえ気をつければいいので大層便利だ。
――さてと、凪夏葵がどれだけなの出来物かは知らないけど、一発かまさなきゃね
そう思いながら階段を駆け降りた。