銀の魔術師と孤独の影

4.探索 03
夏葵の扱う魔術は複合魔術――習得したあらゆる分野を組み合わせるハイレベルな代物――で失敗するリスクも高いが、夏葵はこの手法にこだわる。綿密な魔術設定がきくからだ。

夏葵はこの場で魔神召喚を行うつもりだ。
召喚と言ってもメインはダウンジングになるが、学校の持っている呪力を少しでも消費して、まだ正員でない夏葵を使う組合へのささやかな反抗をするために。
「……頼むぞ」
低く呟き、ダウンジング用のペンダントをまっすぐに垂らす。



「万物の主の威光にかけ、至高の名にかけ、此処に来たらん」



極限の集中。
ぴたりと風が凪いだようにも思える体感速度が体を襲う。



「我、22の軍団を従える偉大な王、プルソンにこいねがう。天にも地にもあらざる力を今此処に宿せ」



おろされたペンダントが、震えた。
気を抜かないままに、夏葵はそっと息を吐き出した。
待つこと数秒、プルソンが与えたベクトルが風に抗って動き出す。

ダウンジングは西を示した。