銀の魔術師と孤独の影
3.凪夏葵 07バーン、と音をたてて教室のドアが開いた。
どこの馬鹿だよ、と思っていると腕をとられ、気がつけば廊下に連れ出されていた。
ドアを開けた馬鹿は香葵だったらしい。
「夏葵、夕飯調達して帰ろ!」
現在二人暮らしの夏葵と香葵は食事当番を交代制にしている。
「……飯当番の時に買って済ませる癖を何とかしろ。だから食えたものじゃない料理しかできないんだ」
携帯の着信履歴をチェックしながら夏葵は口を開く。
「得意な料理はサラダと湯豆腐と目玉焼きとゆで卵と素麺。どこの小学生だよお前」
「そんだけ出来れば上出来じゃん」
「……お前何歳だよ」
16、と別段堪えたふうもなく香葵が答える。
「ほら早く。今日スーパーで4時から惣菜が安いんだから」
「夏葵は?」
「いらない」
夏葵は惣菜売り場で緩慢に首を振った。むせ返るほどの揚げ物の匂いに加えて、香葵がプラスチックのパックに揚げ物を山盛りにしている光景は食欲を減衰させる。
――香葵が太らないのが謎だな。
ニコニコと機嫌のイイ香葵をぼんやりと眺めていると、携帯が鳴った。