銀の魔術師と孤独の影
3.凪夏葵 06編入して二週間がたった。
教師不在のため自習となったこの時間、夏葵は屋上に逃げた。
闖入者が来るとは思っていなかったが。
「こんな天気のいい日に自習なんかやってらんない……あれ?」とか大きな独り言をいいながら汐崎あかりが屋上に出現。
「あんた……」
授業なんてどうでもいいと言う空気を裏切らない奴だ。
「そっちもサボり?」
「あ、ああ……」
「そっか。まあ、こんなにいい天気だと昼寝もしたくなるよね」
一緒にするな、と胸の内で呟く。
その後何でそんなことを聞いたのか。自分に問いかけても答えはでなかった。
「…………なあ」
「何?」
「あんた、狭霧神社の巫女、だよな」
「え、うん」
――俺は何をやっているんだ?
調査の確認? そんなことする必要はないはずだ。
微かに眉をひそめてノートに目を戻す。
気配で汐崎あかりが離れるのがわかる。
自分でしたことが気に入らないのはもうひとつ理由がある。
汐崎あかりからは同族の匂いがした。天才肌で苦労なく何でもできる故の、何事にも熱意がなく、独特の冷めた空気が。
――人のことを考えている場合じゃないか。
シャーペンをノックする。
同じ建物に日常的に魔術師がいるので今以上に呪力の管理をしなければいけない。
――だだでさえ呪力が漏れやすい体質なんだから。
首からかけたペンタクルを手繰りよせて軽くキスを落とす。
――それにそろそろ。
携帯をポケットの上から押さえる。所在地が移ったことで一つの予感がある。
――今日明日ってところだな。
夏葵はひとつ頷いてノートにシャーペンを走らせた。