銀の魔術師と孤独の影

3.凪夏葵 04
編入して一週間が過ぎた。

生徒の話題は夏葵から教師の結婚話に移っている。
ありがたいことだ、と思いながらいつも通り屋上に向かう。
「おーい、凪」
「……何です?」
田宮だ。廊下で大声で呼ばれて、注目される夏葵はいい迷惑だが田宮は全く気にしていない。
「クラスはどうだ、慣れたか」
「まあ」
「そうそっけない反応するな」
そう言って田宮が肩を叩こうとしたので、夏葵は軽く距離をとった。接触されないようにしているのは最初からなので田宮もあっさり引き下がる。
「ところで、ちょっと頼まれて欲しいことがあるんだが」
「お断りします、よそをあたってください」
まあそう言わず、と田宮は離さない。
「委員長に昼休みが終わるまでに俺の所に来るように言ってくれ」
そう言うと「頼んだぞ」と言い置いてすたすたと立ち去る。

夏葵は軽い舌打ちをした。無視してもいいが、言わないで自分のせいにされるのも気に入らない。
教室に取って返す。これで浅井利が教室にいなかったら、あとは知ったことではない。