銀の魔術師と孤独の影

3.凪夏葵 03
写真よりも軽薄に見えるな、と夏葵は思った。浅井利のことだ。
編入前に平瀬は徹底的に調べ上げたので知っている。平瀬唯一の神社、狭霧神社の息子。平瀬在住の魔術師。
そして今、横を通り過ぎた汐崎あかり。狭霧神社の巫女。彼女もまた平瀬在住の魔術師。
この女は俺を見てもけろりとしていた。珍しいが、一体どういう神経をしているのか。いずれにしても正常な反応は言葉のない他の一般人だ。この二人がおかしい。さすが魔術師、と言うべきか。
そんなことを考える夏葵をよそに、朝のホームルームは終わった。



平均よりも難度高めの授業に浅井利がつかず離れず必ずいたが、昼休みにさっさと姿をくらます。ぐずぐずしていたら香葵が来てしまう。
さりげなく人気の少ない方に足を進める。
――確かこのまま階段は屋上に。
狭く暗い階段には夏葵の足音だけが微かに響く。
鍵は開いていないかもしれないが、人がいなければこの階段でもかまわない。
階段を上りきってノブに手をかける。ノブを捻ると何の抵抗もなくドアが開いた
途端に風が吹き抜けた。



屋上にはだれもいない。もしかしたら、屋上が有ること自体知らないかもしれない。
無意識に潜めていた息を吐き出す。
――人といるのは、疲れるんだ。