銀の魔術師と孤独の影

3.凪夏葵 01
凪夏葵は冷たい目で職員室内を観察していた。

編入初日ということで、香葵とまとめて呼び付けられただけであって、夏葵は自分の興味のないところはどうでもいい。
無表情を張り付けた顔は美貌と相まって異様な空気を放っている。とは言っても、職員室の隅にある面談スペースには今、香葵以外にはいない。
正直言って、夏葵には学生生活が煩わしい。それでも世間に対するカモフラージュのためには学生でいることが一番手っ取り早い。大人は理解できない行動を取られると「今の子供たちは変わったことをする」と言って片付けるからだ。
「夏葵、顔に面倒臭いって書いてあるよ」
「読み取れるのはお前くらいだから問題ない、大丈夫だ」
そう言ってから顔を上げる。体格のイイ男性教師が入ってきた。と、夏葵の頭を大きな手で掻き回した。それに微かに顔をしかめる。
「おうおう、なかなか派手な髪だな。染めてんのか」
「……地毛です」
「そうか。まあしばらくは生活指導がうるさいと思うが我慢しろ。奴らも仕事だ。俺はお前さんの担任の田宮だ」
夏葵は話の途中で手を振り払った。それに対し、田宮は嫌な顔はしなかった。
「ああっ、田宮先生早すぎます!僕のこと置いて行くんですから!」
「ああ、お前さんの担任の生沼だ」
そう言って田宮は、今度は香葵の頭を掻き回した。
「ま、今年はなじむためにがんばれ」