銀の魔術師と孤独の影
2.汐崎あかり 06次の日、凪夏葵が無断欠席した。
「度胸あるよねー。まだ編入半月なのに。昨日は自習サボりで今日朝から。真似できないわー、奨学金のためにも」
そっちかよ、といつもならある利からのツッコミはない。突っ伏したまま無反応だ。
香葵に聞いたところによると学校には一緒に来たらしい。
「俺の化学……」
「今日小テストだよね。大変だねー、有機だよ」
利は突っ伏したまま死ね、と呟いた。委員長の威厳のかけらもない。
「にしても無断欠席してまであいつはなにやってんだ……」
弟を謀ってまで。
二卵性だろう、似てない顔をあかりは反復する。輪郭は似ているが、香葵は「彫りの深い日本人」という印象だ。
「俺の化学……」
「あーもー、うるさい。殴るよ?」
それは勘弁、と利が呻くのとほぼ同時にふとした違和感が背筋を滑り落ちる。
「……ねぇ利」
「んー?」
「いや、何でもない」
利が何も感じでいないなら気のせいか何か音を拾っただけだろう。
そう思って違和感を捩じ伏せた。