銀の魔術師と孤独の影

2.汐崎あかり 01
変に校内がそわそわしている。汐崎あかりは冷めた目で教室を観察してそう思った。



関東圏の一地方の町にあかりの通う私立高校は居を構えている。
私立明桂学院高等部。あかりは進学科の一年生だか、初等部中等部からいるので態度も一年生のそれでなければ、新学期を迎える清々しさも感じない。
むしろ眠い。これからある集会を考えるだけでも嫌になる。
式典だからと久々に袖を通さざるを得なくなった洒落たブレザーの制服は動きにくい。そもそも体力の余っているあかりにとってはスカートが嫌、というレベルである。
「不機嫌だな」
後ろからかけられた声にあかりは肩越しに視線を送る。
「利……」
いとこの浅井利が職員室から持って来た学級日誌を片手に立っている。
「ねぇ、集会サボっていい?」
「委員長権限で却下」
普段毒舌でやり込めているが、このことに非があるのはあかりなのでむっつりと口を閉ざす。
「編入生がいるらしいな」
「はあ? そんなことで浮かれるの、連中」
「の、ようだな」
俺もどうでもいいけど、と利も冷めた口調で呟いた。