彼岸花の咲く川で
9.文目のはなし 04「澪実君に用があってね」
さきほど澪実たちが回り込んだ氷柱の陰から、暁がひょいと顔を見せた。
「見てくださいよこの模型。澪実さんによく似ているでしょう?」
模型を再び手にすると、文目はそんなことを言い出す。
暁は軽く返事をすると、その手に止まらせていた白い鳥を澪実に出してきた。
「はいこれ。このまま連れて行ってくれない? 陛下のところに行けば、文は離してくれるから」
向こうの事情も見ておきたいからね、と暁は笑った。
その横で人の子が「信用無いに等しいね」と言い放つ。
「そうやって斜めに物事を見るものじゃないよ」
そういってどすりと、人の子の頭に手刀を落とす。
「違うの?」
「これは式だよ。……まったく」
人の子は納得がいかないらしく、口をへの字に結ぶ。
白の鳥はひょいと澪実の肩にとまる。そのままじっと動かなくなった。
「それじゃあ、よろしくね。そのうち気が向いたら、こっちから遊びに行くって伝えておいて?」