彼岸花の咲く川で

8.原始の八咫鴉のはなし 03
「見事に追い出されたな」
人の子は鼻を鳴らした。
「それはお互い様だろ」
「暁は俺が居ても気にしなかったと思うけど」
いつもは気にしてないし、と人の子は澄ましている。
「多分機密系の書きものなんだと思うよ。下っ端には見せられないんじゃないの」
お前所詮船頭だし。
所詮船頭で悪かったな。

「それにしても、機密って」
「あいつも一応することがあってここにいるってこと」
暁には暁のやるべきことが一応ある、と人の子が言った。
「俺もなんかすることあればなあ」
ため息のようなぼやきには、退屈に飽いた響きがある。
「えーと、その居場所はどこだ?」
人の子は進行方向を顎でしゃくると、氷柱をまわりこんだ。