彼岸花の咲く川で

6.入口のはなし 03
澱んでいる。
橋を渡りながら澪実は横目に川をにらんでいる。
どこが澱んでいるではなくて、澱みそのものが川の形態をとっている。
とりおりびちりと跳ねるのはどう見ても魚じゃなくて、蛇。
すでに橋は5つ渡った。
6つ渡ると禁域――無間地獄の端に着くという。

「無間地獄はついてからが遠い」
「どれくらい?」
「距離はよくわからないけど、行きはよいよい帰りはこわいって思ってればいいよ」
「なんかあるのか」
「あるっていうよりも、道行だね」
意味が分からない。
5番目の橋を越え、少しで6番目の橋に入った。
川はもう溜りだ。
道は、しばらく行くとぷっつり切れて崖――谷だ。
冷たい風が顔面に吹き付ける。
崖っぷちを削って作ったような階段がある。
「ちょ、これ、降りるの?」
暗いのもあって、終点が見えない。
「そ、一番下まで降りるの。そこが禁域」
「うげ」
行きはよいよい帰りはこわい、その通りだ。
「ちなみに何段くらい」
「200まで数えてやめた」

澪実は帰りのことを思い、暗い空を仰いだ。