彼岸花の咲く川で

4.光のはなし 03
「あっれー、澪実じゃん!!久し振りぃー。何々、移動?懲罰?」

来た。
光の裏声は河原によく響くし、光沢のある金髪は霧の中でも存在感を主張していた。
「そんなんじゃなくて……」
「あ、そっかぁ。陛下からの辞令下ったんだっけー。あはは、通行許可証付きの地獄観光旅行だねぇ」
光はそう言うと、ひとりでけらけらと笑った。
「無間地獄でしょー?寒いらしいよー、行くまでは結構蒸すらしいけど」
「知りませんよ、関所越えたことなんてありませんから」
「関所は楽しいよ。あの石頭どもをからかうの大好き」
語尾にハートマーク。
なんとなくうそ寒いものを覚えて二の腕をさする。鳥肌だ。
「賽の河原も陰気臭くていいよねー。あのちびどもにカビ生えてくるのとか最高!!」
悪趣味ぶりも変化がなかった。
つづけて話すせいで、俺は口をはさむ隙がない。
「そういえば澪実ぇ、あんたあの子に会ってないでしょー。たぶんこの先にいるから会って行きなよ。ってか行こ!!」
「持ち場離れて……」
「いーのいーの。今も持ち場離れてるから!!」

全然よくねえ。
そう思ったものの、澪実は口が裂けない限り言えないなと感じた。