夢殿

Breaker 06
あれから俺は、ふらふらと歩く日が増えた。
時間帯はまちまちだが、夕暮れが一番多い。一日中歩いてる日もある。
たわいもないことをずっと考えている日もある。

――ああ、今日も学校に行かなかったな。
それが何だという気がするが。
それにもう夕方だ。いまさら学校に行ってないと気づいても遅い。
日が沈んだ。とたんに辺りが暗くなる。
なんとなく嫌なものを感じた。

――それは、音だ。



「ひさしぶりだなあ」



続いて、じゃらりと、金属がぶつかり合う音。
俺は振り返った先に――breakerを見た。



「お前……」
「どうだ?檻から出てみて」
随分と解放されただろう。そう言って、breakerはからからと笑った。
「解、放……?」
「そう、解放さ」
breakerは意味ありげに、いやらしく笑った。
「お前――何をした」
「夢を壊した」
breakerは真面目くさった声でそう言うと、腹を抱えてげらげらと笑った。
「何にも分かってないんだなあ、お前。
あのな、夢ってのは、現実の裏返しなわけ。つまり、意識とか思考回路とかそのまんまだから、夢を壊したら、自分の中にあった禁忌とか、禁止事項とか、こういうモノ全部壊れるんだよ。――それに、この現実だって、何処までが夢で、どこからが夢じゃないなんて断言できるか?正しい線引きできるか?」
「それは……」
「できないだろう?できないよなあ? けどな、これだけは言っておくぜ。――お前は、自分で、自分の中にある『社会』っていう夢を壊したんだ。俺はそのために問いかけときかけを与えただけ」

俺は悪くないぜ。breakerはそういうと、一人高笑いの残響を残して、夕暮れに紛れて消えた。