夢殿

Breaker 05
不愉快さはじりじりと積っていった。
学校で授業を受けることが不愉快だ。むやみやたらに縛られることが苦痛だ。
――不愉快だな。
俺はそう思って、昼休みに学校を出た。



なんとなく、今の自分はずれているのだろうという認識はあった。
昼下がりの河原をぶらぶら歩いていると、すれちがった主婦が怪しむような眼で見てきた。
普通はそうだろう。こんな時間に中学生ごときが河原にいるはずがない。
――普通ってなんだよ。
俺は自分の考えたことがなんとなくおかしくなった。
普通とはたぶん、常識のことなのだろう。

――常識、常識か。
俺はそんなもの、知らない。
あの日を境に、いろんなものがどうでもいい。縛りさえなければ。
縛りさえなければ、いい。

そのままふれふらと河原を歩き続けた。
気がついた時には、もう日は暮れきっていた。