夢殿

静観者 08
「どうして?」

あれだけ派手にやったから、しばらく来れるとは思っていなかった。
何となく違和感を感じて、坂の上から下を見下ろす。

――少年はいなかった。

「……?」
私は首をかしげたが、まあいいやと思って下がった。
いないのなら、納得がいくまでやるまでだ。
助走、踏み切り――世界が回る。

――誰かの笑った、嫌な顔が見えた。



なんか死にそう、と思った。
今回はいくら何でもひどすぎたような感じがする。
私は身体を見降ろして「ぼろ雑巾……」と呟いた。
悲惨だった。
それでも、私はまだやる。
さっき、見えそうだった。
同時に、死にそうだった。
膝はがくがく言っている。
走るのがちょっと辛そう。
それでも、私はいつも助走を始めるところに立って、走り出した。

いまいちダッシュが効かない。
後ろから足音が聞こえてきた。誰だろう。
さあ踏み切ると思ったのに、膝がかくんと力を失った。

う、わ、ころ、ぶ―――――――
でも、これが一番見えそう―――――――――――――