夢殿

静観者 07
2回目はボロボロになった。
転がり落ちて、まだせきこんでいた少年に激突した。
どっちも吹っ飛んだ。
なんだかいやーな感じに手をひねった。捻挫した。
さすがに、あの坂に行く気はしばらく起きなかった。
あの少年がいたら、さすがに気まずい。
というか、いるだろうから絶対に気まずくなると思う。
だからしばらく大人しくしていた。
とはいっても、それにも限界がある。

結局、今日はここに来た。

坂を前にしたら、今まで考えていたことはどうでもよくなった。
転がるんだ。今日こそ見るんだ。
少年は見当たらない。
いないんだったらいないでいい。
私はそう思って坂に向かって助走をつけた。

踏み切った瞬間、下にちらりと少年が見えたような気がした。



なんでだか知らないけど、今日はやけにボロボロになった。
助走をつけすぎた気がする。踏み切るタイミングも遅かった。
途中に結構大きな石があって、それが頬と足を直撃した。
結構痛い。
少年がどこかでハンカチを濡らしてきて、頬を当てた。
冷たくてしみた。顔が思わずひきつる。
「おねえさん……」
少年は何かを言おうとして、ため息を吐いた。
「……どうせ一度は坂を下ろうとするのは分かってるから、下にいることにしたよ」
「……そう」

ぼんやりと空を見上げる。
いまさらながらに、よく晴れていると思った。
少年の視線を感じる。無視した。
「スカート」
「へ?」
「軽く裂けちゃってるけど……」
首だけ持ち上げて確認してみた。確かに折れ目の付いたところが弱り切ったように裂け始めている。
これくらいどうでもいいや。
なぜだか少年は申し訳なさそうな顔をしていた。