夢殿
静観者 05あの日から毎日、学校帰りにあの坂を探してみたけど、さっぱり見つからない。
あの坂は何処にあるんだろうか。
あの坂は本当に夢の中にあるんだろうか。
さっぱりわからない。
あの坂に行けなくなって、今日で一週間が経つ。
大半の怪我が治った。治ってないところも、もうかさぶたが取れそうだ。
ああもう、今日は無理かもしれない。
ため息をつく。角を曲がった。
その先に、探していた坂があった。
ぽかんと、口を開けたまま立ちつくした。
こちらに背を向けた少年が振り返った。
「おねえさん――怪我、治った?」
逆光に隠された顔は、哀しそうな顔をしているのだろうと思った。
「うん」
「また……やるの?」
「うん」
「…………そう」
少年は諦めたのか、哀しそうに呟いた。
私はその横をすり抜けて、坂に踏み込む。
上下さかさまの少年が見えた。