ボクと私と空中都市

1.猫の街 07
リオは足音が離れて行くのを聞きながら、味気ないパンを噛みちぎった。
ぬるい茶を口にして、やっと咀嚼する。
机には、今朝買ったオレンジと今食べてる堅いパンが2,3個のほかに、メモとビラが数枚のっている。
レオはそれをのんびりと確かめながら、パンを飲み込んだ。
手のひらのパンくずを払い落し、コートのポケットをまさぐる。
がさがさと質の悪い紙を引っ張り出すと、それはガミルの街の地図だった。各階層ごとに何があるかが詳細に書き込まれている。
レオは目がしらをもむと、胸ポケットからルーペを取り出した。麦粒かという小ささの文字の説明はそうでもないと読むことすらままならない。
しばらく字列を睨んでいたが、とんとん、と一か所を指で叩いた。そこには図書館とある。
レオはしばらく険しい顔をしていたが、ひとつ息をつくと、大きなフードを被った。鍵を手に部屋を出る。
夕飯時のせいか、朝よりもにぎやかさの増している商店街を抜け、外階段へ出た。
幾条もかかった橋を見上げる。
橋を行き来する人影は未だに途絶えることはなく、カッツェの街に動く人も多い。
「……やはり3日程度は引きこもるしかないか」
リオは残念と言う空気を隠すことなく呟いた。