銀の魔術師と妖精死譚
1.プロローグ弱弱しく差し込む月光だけが、その空間を闇からすくい上げていた。
ただ一つの明かり窓の下、彼は筆を置く。
「これを」
折りたたみ、封をした手紙を二人に預ける。
「外神舞の二人に……覚えてるね?」
小さな二人は無言でこくこくと頷く。
彼はひっそりと笑った。だが、その表情には疲れがある。
小さな二人は不安そうに彼の顔を見た。
「大丈夫だよ。ちゃんと――ちゃんと生き延びてみせる」
だからほら、日が出ないうちにお行き、と彼は二人の肩を押した。
「頼んだよ。狭霧に――慧と、あかりに」
ふっと部屋から二人が姿を消す。
「…………慧、あかり」
彼は目を伏せた。
「ごめん」