銀の魔術師と妖精死譚

1.プロローグ
香葵は恨めし気に空を睨んだ。
「今日寒すぎでしょー。今3時だよ」
「昨日だって寒かっただろ」
「寒かったけど原因違ったじゃん……あ、今日南瓜食いたい!!」
夏葵は舌打ちをした。
昇降口で香葵に捕まったのが運のつきだ。夏葵はそう思うと商店街に足を向けた。
夏葵は吹き付けてきた風に顔をしかめ、ジャケットのボタンを留めた。
「南瓜以外は何がなかったっけ?」
「玉ねぎだな」
「あとは?」
「南瓜でいいだろ」
「あの、夏葵、メニュー的に……」
「南瓜なんだろ?」
夏葵も南瓜で何を作ろうかまでは考えていないが、南瓜が食べたいなら南瓜だろう。
余計なものを買ったら、明朝に香葵のせいで食えないものが作られる。
「ほら行くぞ」
「ちょ、夏葵待て!!」



「――なつき?」
商店街の人ごみで、誰かが振り返った。