銀の魔術師と還りし人々

episode-少女の言葉- 02
「ねえ、健ちゃん」
「なんだい」
「もうもう10年以上経つんだよね」
健一は首をひねったが、ああ、と思い出して頷いた。
「夏葵?」
「うん。なっちゃん」
羽月はぱたぱたと布団を蹴った。

「あの時は本当に心配したけど」
また笑うようになってよかった、と羽月は安心したように笑みをこぼす。
「こうちゃんはここのところあんまり変わってないみたいだけど」
「そうだなあ、伸びただけだなあ」
体の成長に栄養とられて、あんまり頭には行ってない、と二人で笑う。

――そういえば。
小田原と離れたのとそう遠くなかったころだったな、となぜだか思い出した。
「そういえば小田原一樹、見つかった」
「いや、……まだ」
「結局どうなったのかなあ」

この時、二人はまだ災禍が迫っていることを知らない。