銀の魔術師と還りし人々

22.山中呪禍 01
「行くのぉ……?」
香葵がは情けなく眉をハの字にした。
「今日は引き取れ、だろ? 日付が変われば知らないな」
「いや、その考え絶対ばれてるから」
「ばれてるだろうな」
わかっててやるあたり救いようがない。

もしかして矢島も……と香葵は思った。
きっと同じことを考えて実行するだろう。
「嫌なら来なければいい」
「行かなかったら神社の前で派手に喧嘩するだろうが!」
のけ者にされるのも嫌だし、自分の呪力体質が影響をあたえるのも嫌だ。夏葵がドンパチやらかして、あとで巻き添え説教はもっと嫌だ。
香葵がそういうと、「注文が多い」と一蹴された。
いや、香葵の注文は「出るな」の一つなんだが、夏葵は出ることが前提らしい。
確かに夏葵がここで大人しくしていたら「明日は嵐」と言うだろうが。
「じゃ、俺は行く」
香葵はがくりと肩を落とした。全くもっていつもの夏葵だ。
香葵は力なくジャケットを取り上げると、重りになるためにとぼとぼと追いかけた。



同刻、別地区。
「やっぱり、黒いんだよなあ……」
矢島は狭霧神社が遠目に見れる道路にいた。
呪力が内部に凝っているのか。
結界が揺れた。
やなり何か起こっている。
矢島は確信すると、神社へ足を向けた。
矢島がどうこう、というより、夏葵が来ることがわかっているから横槍を入れに、である。
「あれに救けなんか求めないよね……? 汐ちゃんは」