銀の魔術師と還りし人々

21.夕闇の社 04
「やっぱり来たぞ、あいつ」
「こういう時の行動は割とわかりやすいから対策立てやすくて助かるわ」
「お前あいつらにメールなりなんなりしてこないように言えよ」
利がそういうと、あかりは縁側を指差した。
あかりの携帯が転がっている。
「うわ、壊れてる。完全におじゃんだコレ」
「さっき落っことして、水の中にドボン」
朋也はあかりの携帯をいじくって、何とか開いた。画面が割れている。
普通にしたらここまで行かない。やっぱりもう影響が出始めているのか。
「紅と花は」
「大人しく引っ込んでるわよ」
「そうか。狭霧刀は収まらない……か」
あかりが今帯びているのは闇戸と狭土だ。それもひどく反応している。

「…………そろそろ、ね」
「……ああ」
空を見上げた。
晴れているはずなのに、星は見えない。
あちこちに火を灯しているはずなのに、境内は暗い。
暗い、暗い夜だ。
声が、呪詛の声が聞こえる。
朋也が神社の守備のために、授与所に消えた。
「わたしは今夏葵の相手なんかしてる暇はないんだけどなあ」
黙って今夜は寝てなさいよ、とあかりがぼやく。
「それとも」
「それとも?」
「あいつならこの状況を打開できるかしらね」
「…………そうだな」