銀の魔術師と捕縛の糸

spinoff-健一-
結婚したんだ、と健一はそう言った。
小田原は思考の読めない表情でそうか、と答えた。

「魔術師か? 霊験家系か?」
「ううん。羽月」
「そうか」
「……小田原?」
ふっ、と小田原が静かに離れた。
「おい、ちょっと……!」
まだ何も話していない。
まだ何も聞いていない。
離れた理由が一番わからない。
「小田原ぁ!」



それ以来、小田原と会う事はなかった。
同窓会にも来ていないらしい。
他の友人も一切連絡先が分からないという。
それも頭に会ったのは少しだけだった。
夏葵と香葵が生まれると、元気でやんちゃで、本当にそれどころではなかった。
手に負えない上、心配だらけの息子2人だ。
それでも、時間が余るとふと思い返すことはあった。

――それがこの前、

天地がひっくり返るほど珍しいことに、「夏葵の具合が悪すぎる、暇なら迎えに来い」と連絡があり、一度行ったきりの高校へ向かった。
夏葵でも体調を崩すことがあるのかと変な感心をしながら。
そうしてついた高校は、うっすらと呪力が広がっていた。
一瞬思い当たらなかったが、記憶から呼び起こされたのは小田原だった。
「小田原?」
そう、実に20年以上所在の分からなかった小田原がそこにいた。

もうかれこれ18年ぶりの対面だった。