銀の魔術師と孤独の影
6.決行 01 文章が入ります。がらん、とした体育館には、片づけ忘れたのかボールが一個だけ転がっている。
後ろ手に扉を閉じると、この前と同じ土星2の護符を扉に張り付ける。鍵は外からでないとかからないようなので諦めた。
夏葵は身をひるがえした。ステージ側へ一直線に走る。
手早く済ませないといけない。
魔術の発動に気づいたら汐崎あかりと浅井利が駆けつけてくる可能性がある。それから香葵。あまり帰るのが遅いといぶかしんで連絡を入れてくる。――そんなものを相手にしている暇などない。
鞄をひっかきまわし、もどかしく魔法円布を出す。そうしながら柄にもなく焦っている自分がいることに気がついた。
――本当に、柄にもない。
一呼吸間をあけて気を落ち着けると魔法円布を広げた。
電気のついていない体育館内で、魔法円布が夕焼けに染まる。
見ようによっては、それは血染めに見えた。