夢殿

静観者 after story
「それで、君がやったの?breaker」

おねえさんを見送った後、僕はあらぬ方に問いかけた。
「あらら、ばれちゃったか」
振り返った先の塀の上に、青年がひとりいる。
奇妙に周りから浮いていた。気配はないくせに、見るといやに目立つ。
「君以外にいないだろう?こんなことするのは」
「そうかあ?」
ひきつれるように口を開いて、青年はくつくつと嗤った。
「お前の同族は、ま、あり得ないけどなあ?でも侵蝕屋だって分からないぜ?どうして俺と思った?」
「侵蝕屋は、わざわざ他領域まで来ない。せいぜい宮の周りだ。他のろくでなしも――他所まで来て騒ぎを起こすのは君、breakerくらいだろう」
「よくおわかりで」

僕は坂を振り返った。
おねえさんの執着が薄れたことで、急速に形が変わり始めている。
青年は塀から飛び降りた。腰に付けた鍵束がじゃらじゃらと鳴る。
「こんなことしてても意味ないぜ」
「他者を堕落させて狂わせる君のすることこそ、だよ」

お人よしは損だな、と聞えよがしに言われた。
そうだね、君みたいなのが多いと、と僕は返事をした。
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