ボクと私と空中都市

1.猫の街 01
その街は、はるか上空から見ても、遥か下方から見ても、美しく円形に整っていた。
粗削りな花崗岩がむき出しの62にもなる地下層では緑が、明りがこぼれ、貪欲に場所を求めて洗濯物がはためく。
一変して32の循環路が同心円に配置された地上層は、石畳と尖塔とドームが整然と美しく立ち並ぶ。
街に一歩踏み込めば、柔らかな曲線と流線型で描かれた模様で飾られたそこには、人と小動物が住民権を得て暮らす。
市場には商店がひしめき、人がひしめき、かごを手にオレンジを売り歩く少女。
宿屋街には看板が並び、客を呼び込む若い男や、カウンターに掛ける女将と赤ん坊。
仕立て屋、武具屋、工房は静かに立ち並び、ひっそりとした路地には急ぎ歩く客。
商品を手に交渉しているのは、魔術師と魔術具屋の親父か。
そう、街のどこに行っても隅に不思議と美しく整った紋様は魔術の街ならではのもの。
空中都市カッツェは、どの魔法都市より美しく、活気があった。
だが人々は、人と共に暮らし、人と共に道にあるそれらを見て、この街を言う。

猫の街、カッツェ――と。