企画 2012/01/01

華衣 08
「おや、見かけませんが、あれは何ですかな?」
悠が老人の視線を辿る。
「ああ、あれですか。このたびこちらで預かることになりましたものですよ」

「ばがにしてないが?」
「きれいだって言ってるんだよ」
それを聞いた花衣が嬉しそうに、利の袖を掴んで振っている。
「……ならいい」
紅衣はぷいっとそっぽを向くと、段をよじ登って、掛けられた着物の陰に入った。



「あいつ、何でか子供に好かれるんだよねー。幼稚園児くらいの子供に」
「あ、そう」
「夏葵はあんまり子供に好かれないでしょ」
「はいはいそうですよー」
あかりの言葉に、夏葵は足を投げ出した。
「けどさ、あれは子供じゃない。強いて言うなら――式神だな」
あかりは何ともつかない高さで鼻を鳴らした。
「そうね、式神だわ」
あかりが利に視線を向けると、笑顔の花衣が駆けて行った。
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